往復書簡8通目

書簡 8通目 〜発想法のリリーフピッチャー〜
from 加藤昌治

 4月から始まる新年度はワークショップの機会が多くなるものですね。改めて人間一人ひとりのアイデア発想力の奥深さと、集合知の豊かさ=横幅と深さ、両面での選択肢の多様さに「すげーなー」と思う今日この頃です。

と同時に、プロとしてやっていきたいなら、あるいはそれなりにイノベーティブなアウトプットを出したいならば「考え続ける体力」をつけないといけないな、と再確認しています。
半面最近はすぐに「コツは?」と聞く人が増えてきていて、もちろん効率化できるに越したことはありませんが、まあ実際はそうそう簡単にはいかないんだよねえ、とも。
「考え続ける体力」のバリエーションとしては、「短時間で大量の情報を見る体力」とか「選択肢としてのアイデアを数多く見て、評価する」もあって、これまたトレーニングしないと、途中でへな〜と萎れてしまうなあ、と。

そして数多くの選択肢を見るのが大変なのは、石井さんが書いている「アイデアという未成熟なもののポテンシャルを精査するのはとても難しいことで」ってことですね。見ること自体も大変なのに、かつ見通しにくいアイデアのポテンシャルを評価する、しかも瞬時に、と来ればそらあ六つかしいわね、と思います。

さて、「死者の書」。まあ基本的にアヤシイですよね(笑)。文字だと思うとアヤシサが増すような気がします。単純な文様・模様として見ると右脳が働くんでしょうか?

—質問です。このメソッドを使うとしたら、使うのにより向いている場と、あまり向かない場があるとするならば、それはどういう場でしょう。
読者にとっても、「チームで試してみようかな」「でもな・・・、ちょっとアートっぽいメソッド過ぎない?」という躊躇は当時の私と同じくあると思います。その判断への手助けになる情報をもらえたら幸いです—

というお題を頂戴しました。そんな「死者の書」発想法ですが、向いている場としては、

・一般的に出てくるようなフツーのアイデアからポンと離れたい時
・煮詰まった時

そして
・何となく「イケそうな気はするモノの、具体的なアイデアが浮かばない時」

あるいは
・自分たちと「正反対」のアイデアが欲しい時

などでしょうか。私見入りまくりですが、イメージ的にはリリーフピッチャー。やや変則のサイドスローで試合の流れを断ち切ってくれる頼もしい存在、みたいな。

当然ながら、知らない手法は導入しようがないのでチームメンバーもしくはファシリテーターが「死者の書」を知っている前提ですが、最初からではなく、困った時のお助け発想法的な・・・? 何かにすがりつきたい心持ちならば「おどろおどろしさ」を乗り越えられるんじゃないかな、と。で、使ってみると「あれ? これいいかも?」で準レギュラーへ昇格へ(莞爾)。

あるいは、アイスブレイクに使ってみるのも手ですね。アイスブレイクって参加者同士の相互理解と協働作業を通じて場を作り出すことが多いと思いますが、発想法そのものを使ってしまう。お題はなんでもよいと思いますが、ちょっと個人作業をした後で共有。「どの絵文字に注目した?」「なんで?」あたりの会話、結構盛り上がれるんじゃないでしょうか。自己開示の要素を盛り込むなら、お題を「自己紹介」にするなどの工夫もありそうです。

で、肝心の本題を考えている最中に「じゃ、さっきやった方法、もう一回試してみましょうか?」で入れていく感じ。

ただ一点、チームで使うためには、「死者の書」の象形文字シートを人数分用意しなくてはいけないのがネックですね。シートを準備する=やる気、ってことですから。

ではこの辺から石井さんへのご質問。前回の書簡にて提示された仮説「アイデアという未成熟なもののポテンシャルを精査するのはとても難しいことで一人の人がやるには限界がある。しかし、当たりはずれもあるけれど、人間には直感的に『あ、これいいかも』を感じる力があって、一人二人の直感では、良いものを検出する力は弱くとも、大量の人が直感的に感じるそれを重ね合わせていくと、未成熟なアイデアでも、潜在的に魅力のあるものを可視化できる」について。

シンプルな質問になりますが、「未成熟なものを判断するために必要なsomethingは?」です。ヴェテランにそれが可能なのは分かります。では若い人、経験の浅い人は「選択眼」をもてるのでしょうか? それとも直観で好いのかしら? 数多くのアイデアという選択肢から、「これは!」のアイデアを選ぶに必要な要素とはなんなのでしょうか。

なぜこの質問をしたかと云いますと、ワークショップ後の質問で「たくさんある選択肢というアイデアの中から、これは、のアイデアを選ぶコツは?」とよーく聞かれます。聞くのはほとんどが若者たち。かつ「コツは?」とよく云えば効率的な、あるいは安直に最短距離を尋ねてくるからです。コツ、ってあると思うけど経験の浅い人たちには見えないよ? と正直思いつつも、気持ちはよく分かるんですね。実際、10年前ほどのんびり成長してゆく場合でもないでしょうから。石井さんのお応え如何。

6月1日
かとうまさはる拝

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石井力重さんと加藤昌治の「往復書簡」

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「発想法の使い方」の制作に一緒に携わってくれた(※)石井力重さんと、この一冊を起点にした疑問や質問をお互いにヤリトリしてみようという試み。「これだけ一緒に議論してたとしても、結構わからないことあるんでしょうね?」がキッカケです。

素直に対談、みたいなやり方もあるんだと思うのですが、今回は「往復書簡」スタイル。ヤリトリの間にある程度の時間を置き、答えあるいは応えをそれなりに推敲するーしっかり考え、考え直すーことで、当意即妙のヤリトリとはまた違う発見があると思ったからです。