往復書簡4通目

書簡 4通目 〜考える、はスポーツ〜
from 加藤昌治

 相変わらず、街から街へ、ワークショップの旅が続いているようですね。人間、移動距離に比例して疲労が蓄積すると聞きました。枕も頻繁に変わるわけで。そして春は寒暖の差も大きい季節です。ご自愛ください。

さて戴いたご質問の件。(前回の往復書簡はこちら
改めて、ワークショップ時のスライドに記載している文言と進行とを見直してみました。「今日はプチ部活です」なんて書いてあるところから始まりますし、参加される皆さんにやっていただくワーク中も「あと5分!」と時間を区切る、制限時間が迫ると「急かす音楽」に掛け替えるしで。どちらかと云えばスパルタ系進行なんじゃないかと思います。

では、テキスト上で「心がけ」ていることは? と自問自答してみると二つあるかと思います。

ひとつは「(ワークショップ中は)強制すること」。まさに部活モード。これはずっと云っていることですが「考える、はスポーツ」。スポーツには各競技ごとに特有の「ルールとカラダの動かし方」とがあります。だから、プロ野球選手がバスケットボールの試合にいきなり出場しても活躍できない。運動選手としてのポテンシャルが高かったとしても、バスケ固有の動き、カラダの捌きができないからです。

そうしたカラダの捌きを体得するにはどうしたらいいのか? 「反復練習する」。それが急がば回れの答えじゃないでしょうか。

しかし、反復練習って面倒くさい。できればやりたくない。それもまた素直な心情だと思います。だからこそ、ワークショップでは無理矢理にでもやってもらう。カラダを動かしてもらう。数時間から一日二日という短い時間の中でカラダに染みつくほど回数を重ねることはできませんが、それでも2回、3回は。
短い時間で反復練習してもらうためには「明解に指示すること」が必要かな、と思っています。軽妙かどうかはさておき、簡潔でありたい。とは考えてます。
かといって完璧なマニュアルになってしまうのも、ちょっと違うと思うので、あえてやや曖昧、というか乱暴にワークに入っていくパターンもあります。やってみて分かる、感じることもありますから。

なので「はい、次はコレやって」「その次はコレ」とワークを淡々と重ねていって、各ワークの流れ・つながりは後で改めて説明するような進行になっているでしょうか。最初にカラダを動かしてもらって、その後で意味に気づいてもらう、的な。

「心がけ」のもう一つは、「テキスト上&トーク上で提示するサンプルのレベルをクダラナイレベルにすること」。ワークショップや書籍を通じてイイタイコトのひとつが「アイデアとは単なる選択肢」である、ということ。まだ選択肢でしかなくて、結論ではない。だからアイデアのすべてが面白いなんてことはありません。それは大いなる誤解。事実、アイデアとはそのほとんどがクダラナイ、ツマラナイものです。素敵なアイデアの割合は低い。とっても低い。

その辺の“レベルの低さ”を知って欲しいので、ワークショップ中のテキストや「発想法の使い方」などに採録しているアイデア(サンプル)のレベルは何というかフツーです。面白いかツマラナイかの二択であれば、圧倒的に後者でしょう。軽妙という単語が当てはまるかどうかはナゾですが、「心のハードルを下げる」ことには多少なりとも貢献しているかな?
「え〜? そんなんでいいんですか?」「はい。(残念ながら)そんなもんです。だから(面倒くさいけど)たくさん考えるんです」

好いアイデアは少ない。だから選択肢を多くすることで確率を上げる。「アイデアを考える」スポーツの構造をお見せしたいと思っています。まあ・・「砂金探し」よりは確率高いとは思ってますので、ワークショップ中の限られた時間の中でも、それなりのアイデアにはぶつかってもらえてるんではないでしょうか(どうだろう?)

と、ここまで書いてきて自分のワークショップと石井さんのWSとの構成の違いに気がつきました。
自分のWSは、かなり「個人技」にフォーカスしています。実際に仕事上で「考える」のはチーム作業になることが多いかと思います。まさにスポーツのように。しかし、チームメンバーそれぞれの技量が低いままでチームになったとしても全体の技量が上がるわけではなく、言葉は悪いですが烏合の衆にもなりかねない。だから「先に個人、次にチーム」が順番なのかな? と思っています。

一方、石井さんのWSは「ペアブレスト」から始まったりと、複数名で行うワークを通じて個人の発想力を引き出していくデザインが多い印象です。

個人とチーム、発想力の鍛え方はどうあるべきなのでしょうか? 鍛える順番ってどのように考えてらっしゃいますか?

かとうまさはる拝  (2015年4月30日)

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石井力重さんと加藤昌治の「往復書簡」

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「発想法の使い方」の制作に一緒に携わってくれた(※)石井力重さんと、この一冊を起点にした疑問や質問をお互いにヤリトリしてみようという試み。「これだけ一緒に議論してたとしても、結構わからないことあるんでしょうね?」がキッカケです。

素直に対談、みたいなやり方もあるんだと思うのですが、今回は「往復書簡」スタイル。ヤリトリの間にある程度の時間を置き、答えあるいは応えをそれなりに推敲するーしっかり考え、考え直すーことで、当意即妙のヤリトリとはまた違う発見があると思ったからです。