往復書簡3通目

書簡 3通目 〜テキストが果たしうる限界〜
from 石井力重

「まずは目次を含めてザッと読んでもらって。読むよりも「見る」ぐらいの感覚で」というコメントをやはりそれぐらいの勢いでいいのかー」と、うなずきつつ、読んでいました。

アイデア発想法という知識は、経験前にそのあらましを理解してもらうことが比較的難しいほうの知識ですよね。その意味では、やはり、発想法の本の初読の方は、目次でモタモタせずに、そこはざっと見て本編に突入、が良い、と。

ちなみに、加藤さんの「目次は書籍の設計図」であるという点、私がワークショップを作るときも同じです。アイデアワークショップを設計する時には、はじめに「進行(流れ)」のスライドを1枚作っています。
まず大きな流れ(5~10ステップ)を作り、そこから細部を作る。
ワークショップの場合、一日単位という時間制限の性質上、大構造5~10、小構造2~4ぐらい。(経験的に。)
⇒平均でいえば「大項目7×小構造3」ぐらいまでしか「1日」という箱の中に知識を入れられない、という無意識の設計前提があったことに書きながら気づきました。
ここから、加藤さんにいただいた質問をついで展開していきます。

「知見を原稿にする時、どこまで省略?」
「聞く側が理解してできるようになるまで(中略)、テキストが果たしうる限界は何処までなのか。」

これは、難しく、答えを考えてみたくなる問いですね。まず、うまくいかなかった経験から恥を忍んで書きます。

書籍で説明する、ということが、実は今の僕にはとても難しく感じています。6年前、アイデアスイッチという書籍を出しました。Webメディアでの連載が本になったのですが、Webでも紙でも、読み物としては、ある一定層には支持していただいたものの、ワークショップで本の中身をそのままやろうとすると、参加者にとっては難しく、発想力がうまく引き出せませんでした。

そこで、削って削って削って。

「使える知識だけれど削ることも出来る――。」というものは削ります。「これを削ってしまったら本質がなくなってしまう」という骨格に突き当たるまで、削ります。残る骨格を3ステップの明確なスモールステップで表現してやります。

そうして、整えてワークが出来上がったら、使えるけれど削ったものを、参加者の資質に応じて付け加えるようにする、というOptionスタイルにしておきます。

ただ書籍でそれをやろうとすると、「正統なメソッド」とは「表現」も「手順と内容」も異なってしまいます。なので、なるべく、創始者に配慮した表現をとりたい。そうすると、自分で説明したいシンプルさとのコンフリクトが起こります。結果として、なんだかよく分からない冗長な文章ができあがります。

加藤さんはその辺のことに敬意を払いつつもいったんおいておいて、読者の有用性の観点から、自由に執筆されていきましたね。その点は、僕は自分自身の筆運びに何が必要だったかを学ばせてもらっている時間なのだ、とも思っていました。

ですので、この問いに私なりにケリをつけますと、「そいでそいで、これ以上なくなると、本質が失われるまで削ぐ。そしてそれを、3つのスモールステップ(シンプルな思考処理)で表現する。それ以上は、+αで表現するか、より本格的な知識(本格書籍)への導きをつけておく、という感じがいいんでしょうかね。ここを書きながら、『未来の自分への書き方ガイド』を整理しているような気分になってきました。

さて、次に、(研修で用いる教科書としてのテキストとして語りますが、)「テキストが果たしうる限界は何処までなのか」については「短期的には非力であり」しかし「長期的にはかなり有用」だ思っています。

ワークショップの設計と進行を膨大にやって、体感として分かったことは、実体験で体感として理解できた人たちは、復習時に紙資料の補足をほとんど必要としません。

ですが、長期的にみると状況が変わります。人の頭に残るCreative系の“知”は我流になり特殊化していきます。そのうち、適用状況が変わってその特殊解では成り立たなくなって困る。そういうスランプの時に、基本に戻らせてくれるのが、書籍、というものだと思います。

あと“企業内での学習”という文脈では、短期的に役立つケースが2つあります。企業研修では、やむなく途中で受講者が退席しないといけないことがあります。そういう時、ワークショップのスライドでは未体験部分を自習できませんが、読み物としてのテキストがあるとそれがかないます。また、学習者が、チームに戻って技法を展開しようとしたときに、技法を説明しきれない場合、チームメンバーにそのテキスト書籍を閲覧してもらうことで、知識土台を揃えて、研修で学んだことを、実践時の補いの手として短く入れればいい、という使い方もできます。

長くなってしまいました。


かとうさんに質問です。

企業内講師が、この本や他の発想法の本をベースに、創造性の研修に使う文章等を作る時にガイドとなる「心がけ」を教えてほしいのです。

かとうさんの本が特に素敵だなぁと思うのは、読者が思わず「ハードルが実は低いんだ、アイデアを出すことは楽しいな」となっていく軽妙な語り口で書かれていることです。

多様な書籍の著者さんのなかでも、かとうさんと、フレドリック・ヘレーン(スウェーデン式アイデアブックの著者)のお二人は、ぬきんでていると思います。

執筆過程を私は横で見ていて、「この概念は、こうも軽妙に伝えられるのか~」と、何度も思っていました。

そういう文章※をつむぎ出すには、どうすればいいのでしょうか。
(※文章=投影スライド、配布する自作テキスト、研修案内文章、など)

(2015年4月23日)

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石井力重さんと加藤昌治の「往復書簡」

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「発想法の使い方」の制作に一緒に携わってくれた(※)石井力重さんと、この一冊を起点にした疑問や質問をお互いにヤリトリしてみようという試み。「これだけ一緒に議論してたとしても、結構わからないことあるんでしょうね?」がキッカケです。

素直に対談、みたいなやり方もあるんだと思うのですが、今回は「往復書簡」スタイル。ヤリトリの間にある程度の時間を置き、答えあるいは応えをそれなりに推敲するーしっかり考え、考え直すーことで、当意即妙のヤリトリとはまた違う発見があると思ったからです。